BIOTOPE代表 佐宗邦威|これからの時代に必要なのは、「自分なりの希望をつくっていける力」だ

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様々な領域のトップランナーに、これからの時代に必要な力や、子どもたちとの向き合い方についてインタビューする、「CREATE Lab」。

後編も、前編に引き続き外資系消費材メーカー等にて幾多の製品/サービスのマーケティング・事業創出を手がけ、現在は戦略デザインファーム「BIOTOPE」代表として、様々なプロジェクトを手がける、佐宗邦威(さそう くにたけ)さんに、CREATE by KOOVプロジェクトリーダー 清水がお話を伺います。

前編インタビューはこちら

BIOTOPE代表 佐宗邦威
東京大学法学部卒。イリノイ工科大学デザイン学科(Master of Design Methods)修士課程修了。米プロクター&ギャンブル(P&G)でマーケターとして数々のヒット商品を手掛けた後、ソニー クリエイティブセンターに参画。新規事業創出プログラムの立ち上げなどに携わった後、戦略デザインファーム「BIOTOPE」を設立。『直感と論理をつなぐ思考法』『21世紀のビジネスにデザイン思考が必要な理由』『ひとりの妄想で未来は変わる VISION DRIVEN INNOVATION』著者。

「希望をつくっていける力」を育てたい

清水「これからの子どもたちに必要な力・スキルとしてはどのようなものがあるでしょうか?」

佐宗「答えのない時代だと先ほど表現したのですが、こういう時代だと人間は不安なんですよね。はっきり言ってしまえば、未来が今より良くなる確証ってないじゃないですか。だからこそ、大事なのは『自分なりの希望を今つくっていける力』だと感じています。自分に対する自信や期待を現在進行形でつくり出すことができれば、それが未来の希望に繋がっていきます。例えば、この『CREATE by KOOV』はまさに自分の想像や、やりたいことを具体化でき、自分がワクワクすること・イマジネーションをかたちにして、実現できるかもという期待感を持つことができる。僕は希望をつくる学びと呼んでいますが、子どもたちに経験してもらいたいのはまさにそういう学びだと思っています。」

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清水 「大事なキーワードをたくさんいただきました。子どもたちがそういった力を身に付けるために、意識すべきことってなんでしょうか?」

佐宗 「身体と頭のバランスですね。『CREATE by KOOV』であれば、手を動かしながら考えることができますよね。プログラミングを体験することで抽象的に考えることと、ブロックでかたちをつくることで具体的に考えることを子どもたちは何度も往復します。これからの時代は、あらゆる部分でデジタル化が進むので抽象的に思考することが増えてきます。一方、どんどん身体で実感することは薄くなる。そうすると実感や達成感だけでなく、幸せの実感も薄くなっていくんですよね。まずは身体の実感を持てること…身体を動かして楽しいとか、ワクワクする…という体験を確保した上で頭で考える・勉強するいう経験を上乗せしていければいいですよね。これが受験期などになると大きく頭の方にバランスが偏るので、常に身体で自分で楽しいと感じられているスペースを確保しておくことが重要だと思います。」

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清水「まさにおっしゃるとおりで、我々も『CREATE by KOOV』の設計の際に意識したのが、手の中で想定外のことが起こりやすい状態をつくってワクワクしてもらうことです。その想定外を、ブロックや身の回りの素材、プログラミング…つまり物質とデジタルの間を試行錯誤しながら行き来することでクリエイティビティや生きるためのチカラを育むことを目指しています。まさにそれらは子どもたちの希望につながる学びになると信じています。」

保護者は良き「コーチ」であり、「オーディエンス」であれ

清水「最後に、これからの時代を生きる子どもたちに対して、保護者はどう向き合えば良いと思われますか?」

佐宗 「今日は『答えのない時代』『答えを自分でつくる時代』という表現を使ってきました。保護者が『答えはすでにある』、と思い込んでしまうことで子どもの選択肢や成長を阻害してしまうこともあるでしょう。ですから、それらを阻害しないような日常の遊び方や声かけの仕方が重要だと思います。例えば、『答えがない』ということは、学習のやり方やスタイルも変化していきます。先生や上司のような答えを教えてくれる人がいてそこから教わるというスタイルではなく、対話しながら振り返って学んでいくスタイルになると思います。そうなると、保護者に求められる役割は、コーチのような、本人の振り返りを客観視する役割に変化すべきです。」

清水 「確かに、子どもたちにしても大人にしても、自分ではなく、他者の視点に立つということは、別の刺激やアプローチがないと難しいことですよね。」

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佐宗 「こういうものをつくってみたら面白いんじゃない?とか触発したり、モチベーションをつくる声かけができれば素晴らしいですよね。別に保護者は教えなくていいんです。どんどん周りの世界が複雑になっていく中で全部自分がやるのは大変じゃないですか。全て保護者が教える必要はないし、子どもと一緒に何をするか考えるだけで良いということを伝えたいです。また、モチベーションという観点では、脳科学的にも、子ども自身が『考える』ことってとても労力を使うんですよね。大変だ、苦しいという過程をモチベーションに変えないといけない。それを考えると、『これで誰かを驚かせてやろう』という自分自身のワクワクが大きなモチベーションになるんですね。なので、保護者が良いオーディエンスである、ということも必要なのかもしれない。見せた時にどんな反応がくるのか楽しみになるので、次第につくるだけではなく、どう表現するかという意識が生まれてくるんですよね。そういうつくる楽しさから、見せてみる、披露するという表現者としての成長も生まれてくると思います。」

清水 「やはりワクワクする気持ちや『楽しい』と感じる体験は、辛いことを乗り越える原動力になりますよね。本日はありがとうございました。」

佐宗 「ありがとうございました。」

 

清水輝大(インタビュアー)
(株)ソニー・グローバルエデュケーション CREATE by KOOV プロジェクトリーダー / エデュケーション エヴァンジェリスト
美術館学芸員として美術館教育を担当の後、2018年より現職。造形教育の視点からプログラミングを使用した教材の研究開発、教育イベント企画、教育シンポジウム・研究会・学会講演等。明治学院大学非常勤講師。


今後も、CREATE Labでは、様々な領域の専門家の方に、これからの学びのかたちについてインタビューを行なっていきます。お楽しみに!

CREATE by KOOV 公式サイトはこちら

ソニー・グローバルエデュケーションの プログラミング教育

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